「聞いたんでしょ、あいつから」


お茶の入ったマグカップをあたしの前に置いた翔さんは、わずかに苦笑していた。


「聞きました。元カノのことも、遊んでるってことも」

「……事実だから何も言わないどく」

「まあ、誰でもびっくりしますよね。いかにも真面目な翔さんが遊んでるような人なんて。元カノが聞いたら、呆れますよ」

「元カノのせいにするつもりはないよ。俺も、いつも後悔してる」

「じゃあ、なんでやめないんですか」


あたしが睨みつけると、翔さんは「怖い、怖い」とあたしを宥める。


「恨んでるでしょ、俺のこと」

「恨む必要がありません」

「なんで? りーのこと、何とも思ってないって言っても?」

「それでも恨みません。好きな人に抱かれることは、どんな理由であれ、素直に嬉しいんですよ。余計なことを考えるから恨みや落ち込むことがあるだけで」

「意外にピュアなんだ」

「さあ」


今こんな会話が成立するのも、あたしが翔さんに会って早々告白したからであった。