高校に入学して数日たった春の暖かな日のことだった。
移動授業で同じクラスの人の流れについて階段を下りていく俺。
ポカポカとした気温のせいで、眠くなってきて頭がぼーっとする。
ボケッとしているといきなり俺に゙何ががぶつかった。
゙何がはボールのように跳ね返って、さっき上がってきた階段を落ちていった。
俺は焦って階段をかけ下りで何がのもとへ向かった。
廊下に落ちだ何がは小さな女の子だった。
しりもちをついていた彼女は、顔を上げて俺を見た。
あごの辺りまでの短いショートヘアの髪の毛がフワッと揺れた。
それを彼女の背後の窓からそそがれる太陽の光が髪の毛をうす茶色に輝かせた。
「ごめんっ!俺前むいてなくて…」
「ごめんっ。思いっきりぶつかっちゃった!痛くなかった?」
俺の話を一切聞かずに彼女は聞き返してきた。
「え、あ…いや大丈夫だけど…」
俺はわけがわからずにとりあえず彼女の質問に答える。
「よかったぁ…」
彼女は心からホッとしたようで、にっこりと笑っていた。
ビー玉のように丸かった目が細く弓なりになる。
その笑顔はやわらかくて、窓から見える桜の花がよく似合っていた。