それから数日後、迎えたクリスマスイブ。


「カナ、帰ろうよ」

「やだやだ、帰りたくないー」


終業式を終え、クリスマスケーキの販売も大盛況のうちに終わった、午後7時。

後片づけや打ち上げも終わり、あとはほどよい疲労感に包まれながら帰るだけだというのに、あたしはテーブルにカエルのごとく張りついたまま、莉乃や穂乃花の手を煩わせていた。


「いい加減にするの!カナ!これじゃあ、いつまでたっても家庭科室の鍵が返せないでしょ」

「そうだよ、カナ。帰ろうよ」

「……やだもん」


しかも、思いっきり。

というのも、先日、グリコちゃんに言われたことがどうにも気になり、ナオと顔を合わせにくいのが原因で、できるだけ遅く帰ろうと思い、こうして時間稼ぎをしているのだった。

ナオを見ると避け続けること丸3日となった今日は、なんせ、あたしのケーキを食べに来るはず、とグリコちゃんが言ったイブだ。

会いたいわけがない。


「もう。いい加減、腹をくくりなさいよ」

「ごめん、莉乃。でも本当に帰りなくないの」

「そんな可愛い台詞、どこで覚えた」

「はは……」


腰に手を当て、呆れた顔で長いため息をつく莉乃に、あたしは笑ってごまかす。