「怒ってんの?」

「……怒ってない」


ベッドに座ったままのあたしを囲うように、要は両手をつくとあたしを見上げた。

真っ黒な、その前髪の間からのぞく、少しだけ茶色がかった瞳の中にリンゴみたいに真っ赤になったあたしの顔。

その顔は素直じゃなくて、ほんとに可愛くない。


「怒ってんじゃん」

「怒ってないって」


そんな自分の顔が見たくなくて、あたしはうつむいた。

もっと、自分の気持ちに素直なかわいい女の子になりたい。

そしたら、要はあたしに色気を感じてくれたかな?


あーあ……。

やっと要と両思いになれたのに。



「怒ってないんだ?」

「……うん」

「からかってごめんな?」

「……うん」



「じゃあ、俺にキスして?」

「……うん」



…………ん?



「ええええッ!?」


バッと顔を上げると、すぐそばであたしを見上げる要と目が合う。

あたしの返事に満足そうに、口の端をクイッと持ち上げた要。


てゆーか!
いい、今……な、なんて言った!?


あたしは、言葉が出なくて口をパクパクさせた。

要は目を細めておもしろそうに眺めている。


「いいじゃん、キスくらいしてくれても」


要はあたしの手首を掴んだ。



「俺の事、忘れてた罰。 それから、からかったのは、その仕返し」



そう言って、ニヤリ。



ううう!

なんてヤツ!


「…………」


ドクン ドクン


ジッとあたしを見つめる要。

その中に呑み込まれちゃいそうな感覚になる。