【莉奈side】


魁一の手……すごい温かい。


まるで熱を帯びているみたいにその部分だけ信じられないくらい熱くて。


魁一の熱が手の平を伝わって、嫌でもあたしの体中を熱くさせる。



「……どっちだよ」


「えっ?」


左右に分岐している道に出ると、魁一はぶっきらぼうにそう言うとその場で立ち止まった。


ここから家まではもうそんなに遠くない。



「……送ってくれてありがとう。でも、もう一人で帰れるから」


魁一の顔を見ることが出来ずに、ほんの少しだけ俯いてそう言う。



あたしと魁一は偽りの恋人。


偽りの恋人は、本当の恋人にはなれない。


ちゃんと分かってる。


だから、心に鍵をかけなくちゃ。


これ以上魁一と一緒にいれば、自分の気持ちを止められなくなるから。