忙しいうちに年は明けて、一月も中旬に差し掛かっていた。
休みボケの身体を引きずるようにして、僕は空港にいた。

 カレンがアメリカに行ってから一月。
手術は無事に終わって、この度帰国して札幌の病院に戻ってくる。
その前に、短い時間なら出歩いても構わない、というお許しが医者から出たというので、こうして迎えにきていた。

 人ごみの中、カレンの姿を探す。
国際線は込み合っていたけど、案外早く見つけることができた。

 僕が想像していたよりもずっと、久しぶりに見るカレンは元気そうだった。

「ケンー!」

ぶんぶんと手を振るカレンに近寄りながら、僕は苦笑いを浮かべる。
久しぶりに会うのだから、僕もとても嬉しい。


「久しぶり」

「会いたかった!」

「まだあんまりはしゃいだりしちゃダメなんじゃないの?」

「うん、でもこれくらいなら平気だよ!」

カレンは前よりも明るくなったようだった。
それは病気を克服したからなのか、彼女なりに決意を持ってアメリカにわたったからなのかはわからない。
だけど、僕はそんな彼女が変わらず好きだったし、カレンが幸せなら僕も幸せだった。

 二人でバスに揺られながら、窓から流れる景色を見つめる。
久しぶりに帰ってきた日本は楽しいと、カレンはずっとはしゃいでいた。

 街についてからも、二人で特に目的もなく歩いたりした。
何度かカレンが疲れたようだったから、喫茶店に入ったりして休憩したり。

「あーあ、もう病院行かないと…」

「親とか、ユウも心配するよ」

「わかってるよ」

カレンは微笑むと、ゆっくりと歩き出した。
僕は隣を歩きながら、暮れていく町並みを一緒に眺めた。

「不思議だよね…私、助かったんだなぁ…」

「カレンががんばったからだよ」

「そうかなぁ…でも、勇気をくれたのは、ケンだよ」

噛み締めるようにカレンは呟く。
人通りもまばらな通りで僕たちは立ち止まると、ゆっくりと抱き合った。

「本当に、会いたかった」

「僕も」