カレンと別れて一週間。
僕はそれまで毎日通っていたお見舞いも、行かなくなっていた。

足が向かなかったのもある。
ただそれ以上に、今カレンに逢えば、カレンが敢えて僕を突き放した意味がなくなる気がして。
本当は…ただ、自暴自棄になっていただけなのかもしれない。

 たかだが十数年の人生だけど、ずっと一緒だった相手に突き放されて、気持ちのやり場をなくしていた。
それも、カレンが望んだことなんだから、と自分に言い聞かせるような毎日だった。

 僕の態度を見て、クラスメートは色々とうわさをしているようだった。
僕はもう、そんなことすらどうでもよかった。
ただ、毎日カレンのことを思い出しては、それを心の隅に追いやることの繰り返し。


「カレンちゃんと、別れたんだって?」

僕の数少ない友人―…テツが声を掛けてきたのは、放課後だった。

「お前には関係ないだろ」

改めて人から言われると、やっぱりショックだった。
嫌いになったとか、ケンカ別れしたとか。
そういうものじゃないだけに、余計だと思う。

「…まぁ、お前達のことに口出す気はないけどさ」

テツはそういいながら頭をかくと、少し考えてもう一度口を開いた。

「気分転換にカラオケでもどーよ」

テツはテツなりに、気を使ってくれているんだとわかった。
いつもの僕なら、断っていたと思う。
でも今日は、テツの好意に甘えておくことにした。
 学校から歩いて数分のところにあるカラオケボックスは、夕方ということもあってか混んでいた。
それでも予約かなにかしてあったのか、僕たちはすんなりと部屋に通された。

「後で何人か来るけど」

テツは誘っておきながら僕のことなどお構い無しで、好きな曲を適当に歌っている。
僕としてもそのほうが気が楽だったから、ぼんやりとしながら思考の外側で聞こえてくるテツの歌をBGMにしていた。

 「お待たせー」

どれくらい時間がたったかわからないけど、そのうち何人かの友人や、顔も知らない同世代の男女が入ってきた。
こんなに大人数になるとは。

「おせーよ」

テツは僕と違って友達が多いらしい。
気さくに何人かと会話をしているところを見ると、みんなテツの友達か。

「あ、初めましてー。テツのお友達?」

その中の一人が、僕に声を掛けてきた。

 髪は明るい茶色に、ふんわりとパーマを当てていて、多分可愛い子。
カレンとはまた違った感じの美少女だった。

「どうも」

僕はぼんやりとそんな返事を返した。

「あたし、セリナ。セリでいいよー」

セリちゃんは、僕達とは違う高校に通っているそうだった。
あまり、僕のまわりにはいないタイプのような気がした。
華やかで、明るくて。

「ケンくん、でいいのかな?」