どうして私に構うの?
 どうしてほっといてはくれないの?
 私はひっそりと生きていきたいの。目立つ人生なんていらないの。

「離さない。俺から離れられると思うな」

 切れ長の鋭い目に囚われてしまった。

 今日子は大学を卒業し、この会社に就職してもう8年になる。今年でもう30歳だ。会社の中での今日子は仕事もミスなくこなし、文句や愚痴も言わず、残業もする。同僚に対し、必ず笑顔で挨拶や会話をする。
 悪口を言われるわけでもなければ、いじめられるわけでもない。
 話しかけられるわけでもなければ、仕事終わりの、飲み会や食事、合コンといったものに誘われるわけでもない。
 今日子の存在は「居る」だけなのだ。それは、就職してから何かがあったわけではない。自らそのように仕向けているのだ。
 自分自身を、身体を作り替えるまでは。