《ある1日――諒》



「・・・おつり、50円ね」


 この数カ月でずいぶん“愛想”というものを美樹に叩きこまれたつもりなのだが。


「諒くん。サービス業の基本は笑顔よ、え・が・お」


 笑顔の手本見せるならせめて目だけでも笑ってくれと、諒はそんなことを思いつつ、美樹にひきつった笑顔を返す。
 わがままなお客さんがいても、逆セクハラのおばさんがいても、なんか勘違いしている女子高生がいても。
 いつも“笑顔”でいることができる人間って、本当に凄い。
 諒は本気でそう思っていた。