「ジュリアがまだ瑠奈だった頃、親に捨てられただろう?かわいそう過ぎてね、俺たちが買ったことにしたんだ。だけど捨てられた事実に瑠奈は酷く傷ついていたんだ。」
「俺たちは見てられなかった。」
「だから、俺たちが瑠奈を開放してあげたんだ。瑠奈として生きているから親に捨てられた過去が忘れられないんだって。ジュリアとして生まれ変われば、苦しみなんて残らないだろ?」
「それから、これからそんな思いをさせないように。ジュリアと外の世界を遮断したんだ。だからジュリアは俺たちの人形で一生居た方が幸せなんだよ。」


交互に、まるで洗脳するように言われ、頭が可笑しくなっていくのを感じた。



『・・・わよ。』
「「え?」」
『要らないわよ!!何が、私のため?私はそんなことして欲しくなかった!!捨てられたことも、売られたことも凄く凄く、悲しいけど。それでも。監禁なんてされたくなかった。』
「全部、ジュリアの為の・・・。」
『私は瑠奈!!』
「じゅr『瑠奈だって言ってるでしょ?例え、最低な親だったとしても、私に名前をくれた。六歳までは、健康に大切に育ててくれた。感謝してるのよ。』
「・・・そんなわけ・・・。」
『私は、瑠奈でいい。瑠奈がいい。ジュリアっていう仮の名前は、必要ないの。悲しいことも、楽しい事も、苦しい事も、嬉しい事も、全部全部この名前に詰まってるから。』

胸のずっとずっと奥でぎゅうっと抱き締めた、自分の名前。



きっと、たくさん悩んで決めてくれた、色んな意味を持った大切な、名前。




私は、瑠奈で幸せだった。