<side 佐々>

よっぽど、言ってやろうかと思った。



“剣菱”のことなんか、とっくに知ってんだよ!

この、バカ花美!



……ってさ、

でも、無理だった。

言えねぇよ……



「なんで?」



“オレが知ってるなんて言ったら、また逃げんじゃん。お前……”


――ってのは、喉の奥に押し込む。



「いつまでも制服のままってワケにもいかねぇだろ。まあ、せいぜい貢いでもらえよ」


「で、でも……」



大きな目を心配そうに揺らめかせて、オレを見上げる花美。

オレのもんにしたって思ったのは、あの日の一瞬だけで、あとは全然そんな気がしねぇ。


“スキ”


……っつったのも、初めて抱いた日っきり、花美からは言ってくんねぇし……

付き合ってもくんねぇ……


なぁんか、オレばっか好きで、花美はあんましなんかな……

……とか、らしくねぇコト考える。



「……」



うわ……

なんか、すっげぇヘコんできた。



「きゃぁあ~!さらにカワイくなったんじゃないの?さあ、お買い物に行きましょ!ず~っと、楽しみにしてたんだから!」

「お、おおお母サマ、お久しぶりです」



なのに、完全に舞い上がった母さんは駅前だってのにお構いなしだ。

まったく、人の気もしらねぇで……

少しは落ちつけよ!