ゆっくりと歩き出す音。

(宮本)「私のかってな決めつけじゃないわ。
彼女が入院した時お父様から若林君の居所
分かりませんか?連絡つきませんかと訊ねられたの。
あなたの実家にも連絡して秋口に海外へ飛び出したきり
全く連絡がつきませんとのことだったわ。ねえ児玉君?」

(児玉)「ほうよ。ほんまじゃのー。会いたがっとったんじゃのー」
(宮本)「そうよ。ほんとに会いたがっていたのよ」

(若林)「分かった。どうも俺が悪かったような気がしてきた。
それで、なにかな?杏子は何をいおうとしたのだろうか?」
(宮本)「若林君、あなたってほんとに鈍感ね。言うんじゃなくて、
言って欲しかったのよ。たった一言」

(若林)「ひとこと?」
(宮本)「そうよ。好きだって」
(若林)「そんなこと。(おどけて)いくらだって言えるよ。
好きだ。好きだ。好きだ。ほら?」

(宮本)「そうじゃなくて。心を込めて。一言でいいのよ」
(若林)「よくわからないなあ」
(宮本)「だから男は鈍感って言うのよ」