夕刻になると、彼女の姿はいつも橋の上にあった。

欄干に座り長い髪を風に任せ、見つめるのは直線に伸びた橋の向こう。

何も言わず、ただ見つめる。


「誰か、待ってるの?」


彼女に声をかけてきたのは真っ白い猫を抱いた青年。


「……えぇ」


彼女は彼を見ることなくそう言って、端の向こう側を眺め続ける。

すると、一人の男が橋の向こうからやって来た。

その姿が彼女の瞳に映る。

けれど、彼は欄干に座る彼女を一度も見ることなく通り過ぎていった。