“ねぇねぇ、あっち向いてホイしようよ?☆”


事務所の全アイドル合同の年越しライブ会場の奈落の中。

出番待ちの暇を持て余した由依が、声には出さず口だけ動かしてそんな提案をした。


由依、もう少し緊張感とかないのかな?

あっち向いてホイって……。

暇だけどさ。



“ガキかお前は!!大人しくしとけっ!!”


やっぱりというか、真面目な遥はネジの弛んだ由依を叱る。


“えー、だってつまんないよー☆”


“あっち向いてホイしても別に面白くねーだろ”


おお、どっちの主張にも一理ある。

これからどうなるんだろう?



“やってあげなよ、遥”


“何で俺様が……!!”


“負けるのが怖いのかな?”


やや後方に立って様子を窺っていた紫水が鶴の一声ならぬ鶴の一笑をしたらしい。

対する遥の眉間に皺が寄っている。


でも紫水って、鶴より猛禽類に近い気がするなぁ……。