「んんー!清々しい朝だな!」




立石 和馬はナツばぁちゃんの家の前に立ち

小声で呟きながら腕を伸ばした。




今朝も性懲りもなく、

ばぁちゃんの家にこっそり来ていた。




「「お兄ちゃん!目立つことしないで!

早く隠れてよ」」




今日は花音と花鈴も同行している。

朝、ランニングしてくると言って

家を出た和馬は、双子にすぐ見破られ

自宅を出てすぐのところで捕まった。

いつもならそれで終わりなのだが、

何故か今朝は双子が同行すると言い出した。




と言うのも、昨夜夕食の席で

壱逗 亮佑について話題が出たのだ。




和馬達の母が、買い物に出掛けた際

亮佑と早苗が仲良く一緒に

買い物をしていたと発言した。

声は掛けなかったそうだが、

花音と花鈴は耳を疑った。




自分達の大好きなお姉ちゃんが

男と一緒に買い物をしていたというのは

信じがたい話しだ。

今まで男の影はそれなりにあったが、

どれも和馬と双子が早苗に接近する前に

裏で叩き潰してきた。

自分達のお姉ちゃんに、悪い虫が

つかないように守ってきたのだ。




それが、まさか。




夏のあの日――。

亮佑がバス停で倒れたと聞き

早苗は血相を変えて家を飛び出した。

だが花音と花鈴は、

"ナツばぁちゃんの孫がバス停で倒れた"

としか聞いていなかったので

孫が男だと思わなかったのである。




そして、極めつけに和馬が

"その男は早苗の彼氏だ"などと

発言したものだから、

双子はなんとしても亮佑の顔を

見てみたかったのである。




もし…もし、早苗に相応しくないと

判断出来たら……。

潰すつもりだった。

いくら、ナツばぁちゃんの孫でも

こればっかりは譲れない。




大好きなお姉ちゃんを、自分達の手で守る。