「……い。玲!」


「…………」


「リア女の2年3組5番、杉野玲[すぎのれい]!」


「…………あ、何?」



何だかすっごく丁寧に呼ばれた気がして、読んでる本から顔を上げる。

目の前には、幼なじみの亨[とおる]の恐そうな顔が広がってた。



「どうしたの?
そんなに力入れてると、顔がしわしわになっちゃうよ?」


「ならない」


「まだ若いのに……気の毒だね」



なかなか元に戻らない顔を視界から消して、また下を向いた。



今、大事なシーンなんだもん……。



ずっと幼なじみが好きだった主人公。

実は両想いだったその子が幼なじみに告白してもらえそうなの。


鈍感で天然なこの子の恋を見守るのは、本当に焦れったかったんだから。



学校がお休みの日曜日。

当たり前のようにあたしの部屋に来た亨を無視して、あたしは読書を続けた。



「玲!」