バレンタインも過ぎた二月下旬のある日。


暦の上では春を迎えたが、現実はまだまだ身を切るような寒さが続く。




「……舞白じゃねえか」




久々に嫌気が差しそうな程の快晴の下、舞白は空手着を纏った青年と出くわした。


日課となっている『立禅』とやらの修行を終えたばかりなのだろう、ほぼ全身を包帯で巻かれた『ザ・怪我人』の青年の頬は零れる汗に濡れ、身体からはうっすらと湯気が昇っている。




「あら。これはまた随分と派手にやられたものですね」


「うるせえ」


ポーカーフェイスで傷をからかう少女に、青年は渋い顔。


何か病気なのではないかと疑われるレベルで蒼白の彼女と半ミイラ状態の彼が向き合っている光景は、かなり滑稽だ。