それから、貴方…龍夜は屋上ではなく私の部屋に来るようになった。



「チーッス!!」


「また来た…。」


「クスクスッ。本当に仲良しね?」


「まぁね♪」


「仲良くないから!!」



否定する私を見て看護婦さんは、「照れないの♪」と言って部屋から出ていった。

龍夜は隣のパイプ椅子に座って雑誌を読みはじめた。



「ねぇ…。」


「あ?」


「彼女のとこに行かなくていいわけ?」



そう言うと龍夜は雑誌から目を離し、うんざりしたような顔で私を見た。


「お前もしつけーな?あんとき言ったろ?俺に好きな奴ができたから別れようって言ったって。」


「言っただけで彼女はいいよって言ったの?」



そう聞くと龍夜は苦笑いした。



「言ってねぇな?」


「ダメじゃん。」


「…やっぱり?」


「つか、その好きな人のところに行きなよ。なんでここにいるわけ?」



そう言うと龍夜は目を丸くした。
まるで、何かを訴えるように。



「なに?」


「お前、分かってねぇの?」


「何を。」


「いや、分かってねぇならいいんだ。」


「あっそ。とにかく、彼女のことちゃんとケリつけなさいよ。」


「分かってるよ。」



そう言いながらまた雑誌に目を向けた。
何も話さない部屋はシーンとして、ただ時計の針の音と廊下から聞こえてくる音だけが響いていた。


しばらくして、雑誌を読み終わった龍夜は立ち上がって、



「あいつとケリつけてくる。」



そう言って部屋を出て行った。

彼女が別れたくないって泣きついたら、龍夜は別れないんだろうか。


龍夜の後ろ姿を見ながら思った。
可愛い子…だもんね。
私とは大違いのとっても可愛い…女の子。