「暑い、暑い、あつーい!!」


空気が歪むほどの熱気が、あたしの体を取り巻く。汗が、額を流れ落ちるほどだ。


「我慢してよ、中村の家まであとちょっとなんやから」

暑い、と叫んだのは、あたしじゃない。あたしの隣にいる友達の杏(アンズ)の声。


「おかしない? 何で男の中村が家におって、あたしらがこないな暑い中歩かなあかんの?」


「勉強会しようって言ったのは、杏でしょ?」


笹原杏(ササハラアンズ)

中村大翔(ナカムラヒロト)


2人とも転校してできた友達。


「そうやけどさー。まさか中村の家しか開いてへんなんてね、そないなこと考えてなかってん」


「結局はそこしか開いてないんやから、仕方ないでしょ。それに、杏は課題をしに行くんやなくて、写しに行くんやからね?」


あたしの言葉が少しだけぎこちないのは、引っ越してきたこの大阪の言葉に、段々慣れてきたから。

まだ、完全に関西弁になったわけではないけど、ちょっとずつ、変わってきている。

それも、中村と杏のおかげだ。


何故この2人と仲良くなったのか。それは今から7ヶ月前に遡る。


転校したてのころ、あたしは見事なまでの人見知りを発揮して、誰にも話しかけれないでいた。

おまけに、言葉もあたしとは全く違う。

完全なる、アウェイ。

そんなとき話しかけてくれたのが杏と中村だった。