ー達哉sideー


「達哉は、さ……あたしに、どうしてほしい…?」


そう言った舞子の目は、悲しそうで、それでも何だか期待しているような目だった。


「行くな」って、言いたい。

舞子が遠くに行くなんて、考えられるわけねぇだろ。

無理矢理にでも引き留めたい。ずっとずっと側にいてほしい。


離したくない。

でも、そんなこと言えねぇよ。



「舞子が行きたいって言うなら、俺に引き留める権利はないし……でも、別れる気はない。」


嘘だって。引き留める権利なんて、なくても引き留めたいんだよ。


でもさ、俺の家は父子家庭だから、よく分かるんだ。母親がいないのって、結構辛い。


もしも舞子がついていかなくて、一人暮らしすることになったら、きっと一人ではやっていけない。

当たり前だ。まだ高校生なんだから。


一緒にいたいからって、そんな勝手な我が儘言ってられるほど、ガキじゃないんだ。


かと言って、一人で生きていくことなんて、到底無理。そんなに大人じゃない。



「そっか……、分かった…」