ナツが晩飯の材料を買うと言って、俺達はナツの家の近くのスーパーに寄った。
「旬、何食べたい?」
買い物カゴを持って俺に尋ねるその姿は、まるで新妻で、物凄く可愛い。
いいなぁ。新妻かぁ……
「旬?」
「え? ああ、何でもない。てか、カゴ持つよ」
ナツの声で、俺は妄想の世界から返ってくる。
そしてナツの持つカゴに手を伸ばした。
「いいよ。そんなに買わないだろうから大丈夫」
「でも、彼女に荷物持たせて歩くわけにもいかねえもん。俺が持つよ」
男として、彼氏として、ちょっといいとこを見せようと思って、俺は言った。
「……じゃあ、ありがとう」
少し照れくさそうにナツは言って、俺にカゴを渡してくれた。
「それじゃあ、何食べたい?」
改めて、という風にナツは言った。
「俺が決めていいの?」
「うん。だって、旬の卒業祝いだし」
そんな名目があったのか…
俺は単に、初めてナツの家に行けるのと泊まれるのと、それぐらいしか考えてなかった。
でも、それなら、初めてナツの手料理も食べれるわけだ。
俺のための料理かぁ…
いいなぁ、この響き……
「じゃあ、肉食べたい」
ナツの手作りなら何でもいい。でも今は、腹が減ってるから、がっつり食いたい。
「肉? 何の?」
「それは何でもいいよ」
「……んー。じゃあ先に肉のところに行こう。時間ちょっと遅いから、なくなっちゃうかも」
キビキビと動いて、ナツは俺を肉のコーナーへと連れて行った。