ナツと付き合い始めて、早一年。


 色々あったりなかったりしたけど、ナツとは超絶好調だ。





「ありがとうございましたー!」


 今日の俺はテンションが高い。


 店を出て行く客にかける声も、自然と明るくなる。



「沖田。今日はテンション高いな」

 大川先輩が俺に言う。


 大川先輩は、カフェのバイト先の先輩だ。


 俺は今日、この大川先輩とシフトを組まれた。


「あ、分かりますー?」

 顔の筋肉が緩みっぱなしで、今の俺の表情は、鏡を見なくても分かる。


「ああ……その理由も大体な」


「聞きたいですか?」


「いや、大体分かるって」


「聞きたくないんですか?」


「どうせ彼女絡みだろ」


「あ、分かります~?」


「……お前キモい。つうかマジうぜぇ」

 大川先輩は引きぎみの表情で俺に言った。


 でも、キモいとかウザいとか、いくら言われても今日は気にもならなかった。


「だって今日は久々に彼女が俺の家に泊まるんですよぉ~。これじゃテンション上げるなって方が無理じゃないですかぁ~」


「分かったからその話し方やめろ! つうか、あっちのテーブルの皿下げてこい!」


「はーい」


 俺は喜んでと言わんばかりに言われた通りの仕事をした。




 最近、ナツと俺の都合が合わなくて、全然会えてなかった。


 電話かメールは毎日してるけど、それだけだ。


 先週末は、ナツが用事があって会えなかった。先々週末は、俺がバイトをぎっちり入れられて、会えなかった。


 それに加えて、セックスはもう三週間近くしてない。


 三週間前、ナツの家に泊まったけど、その時はナツが生理になっててできなかった。


 だから、もう俺はナツ切れでヤバい。


 バイトが終わる時間さえも、もどかしくてしょうがなかった。