「ああ。同じアロウ・シューターならともかく、人間が自分のアロウに触れてしまった場合、チカラが吸い取られちまうんだと。その結果、俺はアロウから所有者以外の不審者として認識され、触れることもできなくなるって仕組みらしい。つまり、そのアロウに触れるのは今――」

「……あたし?」

 おそるおそる自分を指差して訊ねたら、アモルが苦い顔で頷いた。

「しかいないってわけだ。触れることもできなけりゃ、当然アロウを射ることもできない。結果、結びつけるべきカップルを結び付けられないってことだな」

「そんな――」

 言葉を失うあたしをちらりと見る。

 緑の瞳には恨みがましい色がありありと現れていた。

 金の髪を掻き乱すと、むくっとベッドから立ち上がる。

 そのまま、赤い弓矢を指差してアモルは叫んだ。

「だからお前に代行してもらうしかねえんだよっ! いいか、責任取ってビシッとバシッとこのアロウを射て――恋する二人を結び付けてくれ!」

 言葉を失ったあたしを、じーっと見つめ続けるアモル。

 沈黙だけが部屋を満たして、気まずくなったあたしは目を逸らした。

「だって……急にそんなこと言われても」

 そんなの、『はい、わかりました』なんて即答できるはずがない。

 普通の状態でもきっとそうなのに、今のあたしは究極の傷心状態なのだ。

 何が嬉しくて見知らぬカップルのキューピッド役なんて。

「急か? 急だったからダメなのか? じゃあ考える猶予でもあればやるって言うのか? 俺だって時間が許すならそうしてやるさ! でも生憎タイム・リミットは刻々と迫ってる。今月中にアロウを射ないと、結ばれるべきカップルが――その恋が叶わねえんだぞ? それでもお前はいいってのかよ!」

 キッと睨みつけられ、あたしはたじろぐ。

 つい目線を合わせてしまったあたしに追い討ちをかけるように、アモルは呟いた。