夏帆は小学校の体育館の
パイプイスの上に座っていた。


 付添いで叔母が出席してくれてはいたが
札幌の桜の花芽はまだ堅く、
遠くの山には残雪が見える。
・・・寂しい入学式であった。


 式のあと、教室に移ると
机には名前を書いた紙が貼ってあり
『うさみかほ』の文字を探して座る。


 そのあと担任の先生の紹介があり、
全員にいろいろな係が割り振られたが、
夏帆には「名前が似ている」との
誰かの一言で、
『うさぎ係』を任命された。


 まんざらでもない。


 友達のいない夏帆の遊び相手はいつも、
野良猫や捨て犬ばかりで、
うさぎなど触った事もない。