夕闇迫る天神学園。

その体育館裏。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ…!」

呼吸を乱しながら走る一人の男子生徒。

彼は。

「諦めろ」

ゆっくりと歩いてくる、一人の女教師に追い詰められる。

長い黒髪を両サイドでシニヨンにした、赤いチャイナドレスの美女。

切れ長の瞳は女豹の如く男子生徒を見つめ、今にも美獣のように踊りかかっていきそうなしなやかな肢体を、見せ付けるようにして立つ。

「私はこの後、夕城の家でお呼ばれしているのだ。さっさと生徒指導室に出頭しろ。約束の時間に間に合わん」

正確にはお呼ばれではなく、他の教師陣同様夕城邸に押しかけるだけなのだが。