「お疲れ様〜」


お店から歩いて数分の所にある居酒屋。


翼の生ビールのジョッキと、あたしのカシスオレンジのグラスが、カチンと音をたてる。


お酒は好んで飲む方ではない。


一時はビール1杯で、少し気分が悪くなった。


なのに今、こうしてカクテルを飲んでいるのは、何となく気分が良かったから。


仕事を終えた達成感と。


そしてこれからの、未来に対する希望と。


仕事中から引き続き、もう何杯ものお酒を飲んでご機嫌になっている翼に、影響を受けたのもあるかも知れない。


甘酸っぱい口あたりの良いカクテルは、乾いた喉と疲れた体に、スーッと染み込んだ。


「どうだった、今日?」


店長と同じように、あたしに問いかける翼。


あたしはそれを、さきほどと同じように返した。


「そっかぁ〜、良かった〜」


返答までもが店長と全く同じで、思わず笑ってしまう。


それでも、翼なりにあたしを心配してくれていたのだろうと思うと、有り難かった。


そして、もう少し続けてみようと思っている事も付け加えた。


翼は「やったね!」と、喜んでいた。