―――――――夢を見た―――――――


『コツコツ』と足音がする。


それは少しずつ近付いてくる。

一歩一歩……リズムよく。

目を凝らして私は暗闇をみる。

よくよく見る……。

そこには確かにあの人がいた。

いてはならないあの人が……。

微笑みながら私を見る。

私もそれにこたえるように微笑みかける。

手が届く距離になった時、あの人はなにかを話す。

でも、それは小さすぎて私の耳には届かない。

口の動きだけで私はそれを知ろうとする。

―――キミノ……コトガ……スキ―――?

そう言ったの?

あの人は照れ隠しなのかよくわからないけれど、笑顔で私に手を差し出す。

私がそれにこたえるように手を出した。

そして、2人の手が重なろうとした。


刹那、
あの人は私の目の前で真っ赤に染まった。

そんな夢。

今考えると、この夢は私たちがいずれかたどり着く運命の1つだったのかもしれない。


もしかしたら、この道を辿っていたのかもしれない…。

そしたら……今よりさびしかった?

今でも十分さびしいよ。

1人ぼっちはさびしいよ。

帰ってきてよ、また私をみて微笑んでよ、クロム。