「……ごめんね。ごめんね、じゅんちゃん」


 安物のマスカラが落ちて、ひでぇ顔だ。


「わかったから、泣くなよ。同じことは二度とするなよ?」


「うん、絶対にしない……気を付けるし、我慢するね。じゅんちゃん」


 彼女の李花が、「じゅんちゃん」て呼ぶ声が俺は好きなんだ。

 頭が悪くて、高校中退してコンビニのバイトしかできないような女だけど、俺にとっては唯一の可愛い女。浮気なんて一度もしたことない。





「これで、十五万ある。返済が終った証明書とか領収書とか、よくわかんねーけどそういうの絶対にもらってこいよ?」


「うん! 絶対にもらってくる。じゅんちゃん、ありがとう」


 李花が、俺の首に抱き着いてきて、俺たちは、つぶれた布団の上に転がった。


「じゅんちゃん、大好き」

 コテで下手に巻いて、変な癖がついた髪が俺の顔にかかる。

 李花がブランドのバック欲しさに、金を借りた。


 最初は七万を借りて、相手は音信不通のまま十日後には十五万の返済を要求してきたという。

 
 人はそれをヤミ金というんだろ?


 法的に訴えれば、返さなくてもいいような金なのかもしれないけど、俺も李花も、そんな難しい話はよくわからなかった。