透夜と契約を結んだ日の夜、天音は熱を出した。

三十八度までは上がらなかったが、やはり体がだるいことには変わりなかった。

左手首の刻印が発熱の元凶らしく、皮膚の上から触れると特に何事もないくせに、内側からじわじわ広がる熱さは確かに感じられた。



翌日になると熱はだいぶ引いていて、微熱かな、というくらいだった。

休もうかとも考えたが、天音はちょっと無理して登校することにした。

やっぱり透夜のことを知りたい、そんな気持ちが大きかった。



登校して、教室に入って、ぼーっとする頭を働かせて、透夜の姿を探した。

そこに透夜はいなかった。

しかも、その時初めて、天音は透夜の席を知らないことに気づいた。

劇の練習を見学していた透夜に声をかけるまで、恐らく天音は、透夜と会話をしたことがなかった。



座席表の隅に透夜の名前を見つけて、天音はちょっとばかり感動した。

透夜の席は窓際の一番後ろ、日当たりの良くてうららかな気分を満喫できる、最高のポジションだった。



「いいなあ」

「ん? 天音どうしたの何がいいの?」