鼠色の空の、凍てつくような寒い夜だった。


二人は誰もいない凍りついた坂道を歩いていた。



受験を控えたこの時期、クラスメイトたちは遠くの塾や、設備の整った図書館に行っていたが、二人はいつも隙間風がさしこむ学校の図書館で勉強をした。

裕美が遠くまで通う交通費も、塾に通う授業料も払えなかったからであるが、ケンジは不快ではなかった。


いや、むしろ二人で過ごす時間が、幸せだった。



「あ、雪。」

裕美が古びたベージュのダッフルコートに顔をうずめ空を見上げると、その睫毛にフワフワとした粉雪が舞い降りた。