目が覚めた時には既に正午を過ぎていた。




気怠さを残したままリビングの方へ向かうと優しい笑顔を浮かべた麗華が出迎えてくれた。




「凌、おはよう」


「あぁ…おはよう」




欠伸をしながら怠そうにしている俺とは対照的に麗華はすっかり元の調子を取り戻していた。



完全に吹っ切れたとは言え無いが少しずつ前に歩き出している事は確かだった。




「今日…仕事休む事にしたの。こんな酷い顔のまま、お客さんの前に出る訳にはいかないから…」


「…そっか。まぁ…ゆっくり休めばいいよ」




泣き腫らした目、痛々しい傷だらけの顔。



そんな状態で客の前に出れば、必ず客は何かあったのかと問い詰めるだろう。




この世界の仕事では、客は皆自分の選んだ好みの"顔"を見に来る。




見た目を何よりも重視するこの世界において、顔に傷を負ったままでは客の前に出る事は許されない。




でもただそれだけの理由ではなく、昨日起きた出来事を考えれば…ゆっくりと体を…傷を癒すべきだ。




もうあの男にも金にも縛られる必要も無い…強がったり無理をする必要も無い。