夏休みまであと数日。

俺の利き手から包帯は消え、代わりに大きめの絆創膏。

しかしもうばっちりバイトには復帰している。


ある日の放課後、俺は図書室にいた。

すると保坂さんの姿を見つけ、反射的にサッと回れ右をしたが


「にしはらくん」


と笑顔を向けられてしまった。
そして俺は反射的に軽く手を挙げてしまった。


いや、いいんだけど。

自分の行動の一貫性のなさに溜め息が漏れる。


「なにか、さがしてる、の?」


保坂さんは俺に近づき、小声で話す。


「いや、バイトまで時間あるから暇つぶし」

「何、時、から?」


小声で話すのは、いつも以上に話しづらそうだ。


「7時」

「なんの、バイト?」

「ウェイターだよ。ファミレスの」


図書部の人間がこっちを見た気がする。

物色を兼ねて奥へ移動すると、保坂さんもついて来た。


「夏休みも、するの?」

「うん、その予定」

「いそがしいね」

「そうでもないよ」


俺はある棚に着くと、丁寧に隅から隅まで見渡した。