「関田くん、深依さんと机をきちんと並べなさい」
朝の会のチャイムが鳴って、
石川先生が教室にやって来た。
クラス全員の出席を取っていて、
関田くんの名前が呼ばれてから、
石川先生はそう言い放った。
「…はい…」
嫌そうに返事をしてから、
自分の机を動かしたのは、
たった5cm程度。
「関田くん!」
その様子を見た石川先生が、
怒鳴るような声を出すと、
関田くんはまた机を動かしたの。
隙間は3cmくらい残したままで。
わたしは、
何も言えなかった。
ただ黙って
その様子を見てることしか出来なかった。
怖かった。
何かハッキリ言ってしまうと、
いけないような気がして。
(どうして…)
(こんなことになっちゃったんだろう…)
石川先生の出席が終わって、
1時間目まで先生が居なくなると、
関田くんはまた、
近づいていた
わたしとの机の距離を離した。
ほかのクラスメイトで、
そんなことをしている子なんて
誰も居なかった。
わたしの席は、
窓際の一番前の席。
その隣が関田くん。
お気に入りだったわたしの席。
大好きな場所だった。
なのに。
一瞬にして地獄の席に変わった。