「僕は宇宙にいた。そんな馬鹿な、と言われそうだが事実そうだ。きっとこれは夢なのだ。僕にはそれがすぐに分かった。
夢の中とは言え、宇宙空間を独りで漂うという事に対しての不安は消えない。何故か凍えそうなくらい右手が硬くなってい
る。僕は硬くなった右手を頬に押し当てた。重力の無い世界だ、僕の体は寄る辺無く揺らいでいる。すごく孤独だ。不安過
ぎる。戻れなくなるのが怖い。『もう目を覚まそう!』僕は必死になって鉄の様な右手を振った。
僕が手を振り続けていると、『ドウカシタノデスカ』と遠くの方から電子音がして、長方形をしたロボットが光の速さで近づいてきた。長方形をしたロボットはアダムと名乗った。危害を加える気は無さそうだが、僕は疑り深いので、『君は悪い奴で
は無さそうだけど、僕は君を信用できないから、ほっておいて欲しい』と言った。するとアダムは『ワカリマシタ』と無表情に
呟いて帰って行った。僕は凄く計算していた。もしこいつが良い奴なら、もう一度ここに来る筈だ。悪い奴では無さそうだと言われて、本当に良い奴なら僕を放っておける筈が無い、僕はそう思っていた。事実その計算通りになった。アダムは次の日になると、僕を再び訪ねてきた。僕は今度こそアダムを信じる事にした。
『ドウカシタノデスカ』
『実は迷子になってしまったんだ』僕は答えた。