私はあまりにも突然過ぎる課長の言葉に、思考が追い付かない。

「課長……それは……あの……、もしかして……もしかすると、課長は、今、私に愛の告白とかをされていらっしゃるので、ございましたんでしょうか?」

「そのつもりだが……大丈夫か?杉原??」

「カ、カチョォォォ~!」


私は腰が抜けてヘナヘナとその場に座り込んでしまう。


「杉原!?」


課長は私の目の前に屈みこむと、私の肩に手を掛ける。


ああ……
やっぱ、ダメだ。


私、この手が好きだったんだ。
この声も。
この瞳も。
全部全部、好きだったんだ。


「……私もです」

「え?」

「私も……さっき気付いて」

「さっきって……お前」


課長が呆れ顔で苦笑いしながら私の顔を覗き込む。


「私、お見合いしている間も課長のことばかり考えてしまって……。
だから、お見合いをキャンセルして来たんです」

「俺もだよ。これからNYだと言うのに、なぜかお前の顔ばかりが浮かんだ。
気付けば、飛行機をキャンセルしてお前をぶんどりに行こうとしていた」

「課長……」


顔を上げるとそこには屈託の無い課長の笑顔があった。


「好きです。課長」


課長は返事をする代わりにそっと頷き

顔を傾け

目を瞑り

顔がなんか段々近づいてきて……

はっ!!

ま、まさか!

もっ、もしやこれはっっ!!


思わず課長の口を両手でバッ!と押さえる。


「かっ!課長!こっ、ここは公衆の面前ってとこなんですがっ!」

「知ってる」

「み、みんな見てるんですが!」


外人さん達が私達を指差しながらヤンヤヤンヤと囃し立てる。


「「ワァオ!キモ~ノ!」」

「「ヒューーッ!ゲイシャ~!!」」

「「オオッ!!セップ~ク!!」」

「あらぁ~!若い人はいいわねぇ~!」


見てる!
外人さんどころか、課長!!!
ニッポンのおばちゃん達もバッチリ見てるよ!!


「課長!!」

「気にするな」

「気にするなって。でっ、でもっ!!私、ファーストキ……」


課長は抵抗する私の両手をどけると首の後ろに手を回し、ぐいっと引き寄せ、「もういいから黙れ」と擦れた声で囁きながら、優しく唇を重ねた。