アパートに帰り、ベッドにコロリンと転がると、はぁ~と深い溜息がこぼれる。

カップ麺24個かぁ……

じゃ、なくて!


佐久間主任、本気だ。

本気で、転職する気だ。

なんか、脱力。


化粧、落とさなきゃ。


っつーか、スーツ、皺になる前に着替えなきゃ……。


しなきゃならないことは山ほどあるけど、起き上がる気力が湧かない。


なぜじゃ?


コロンコロンと枕を抱えて転がりながら、考え込んでいると『運命』のケイタイ音が鳴る。


ダッダッダッ、ダ~ン♪


か、かぁちゃんからだ!

ガバッとベッドから跳ね起きる。


「かぁちゃん?!どがんしたとね?こがん夜遅くに……」

「しょうがなかやんね。あんたは、日中はいっつも忙しかみたいで電話に出んけんさ。
どうね?仕事は上手くいっとっとね?」

「まぁ、まぁまぁたい」

「バカヤロ課長さんとは、どうね?」

「え~、まぁ~……まぁまぁたいね」

「あんた、さっきっから、『まぁまぁまぁまぁ』ばっか言いよっけど、ほんなごて、大丈夫ね?」

さすが、かぁちゃん、鋭か~!

「ところで、わざわざこがん夜遅くに、そぎゃんことで電話掛けてきとっとじゃなかろ?」

「するどかね。実は、富美代の体調が思わしくなかとさ。ずっと、血圧が高こうて……。せっかく、容体も落ち着いたけん九州に連れて帰って来たとやけど、病院ば、移らんばいかんかもしれん」

「ふみねぇが?!」

「来週辺り、東京の大病院への転院ば奨められとっとさ」

ふみねぇが東京の病院に転院……。

大丈夫なんだろうか?

その夜、私は電話を切った後もなかなか寝付けないまま気付けば朝を迎えた。