私は、佐久間主任に手を合わせて、何とか休みをもらう。

そして、課長のマンション目指してタクシーを走らせる。

私は、タクシーの中で、佐久間主任の言葉を思い出していた。

『今朝、倒れたらしいけど、点滴を打って、2、3日は自宅静養らしい。今は、自宅に帰っているはずだ』

日本での交渉はかなり大変だったと聞く。

全てが無に帰してしまうかもしれないと噂されていた中、課長がタフに交渉してくれたお陰で、プロジェクトは薄皮一枚、なんとか首を繋いだって、スタッフみんなで喜んで……。


ただでさえ、課長は寝ていなかったのに……。

それは、このNYに来てからの仕事ぶりを見て分かってたことなのに……。

バカだ、私。

自分のことしか見えなくなってた。

こんな子供で未熟な私が、家庭どーのとか、子供がどーのとか……ホント、脳天気だ。

私が課長だったら、こんなお子ちゃまな私が妊娠でもしたらきっと不安に思ってしまうよね。

そんな風に思う一方で、もうひとつの本音も姿を現す。

それでも、ウソでもいいから課長から「産んで欲しい」の一言が欲しかったなんて、思ってしまう。

抱かれるたびに、抱く不安はきっと拭えない。

もし……これで妊娠したら。

赤ちゃんが出来でもしたら、課長は冷静な声できっとこう言う……。

『堕ろせ』って。

そんなの、耐えられない……。

抱かれるたびに、私は天国と地獄のはざ間できっと揺れ動くんだ。