由紀……

由紀……

由紀……

由紀……。

(↑心の中でエコー中)

課長ってば、今、しっかり「由紀」って言いましたよね。

タラ~リ、タラリと背中を冷たい汗が一筋流れる。

まさか、佐久間主任、聞いて……。

佐久間主任の「え?!まじかよ」と言う言葉に、私の甘い考えは斬頭台の露と消える。


アハハ……しっかりばっちり聞いてましたね。


もう、課長ってばうっかりさん♪

~~んなわけなかばいっ!!!

絶対、ワザとですよね!今の。

社内恋愛ご法度のこの会社で、2人の関係がバレたら、私、地方支社に飛ばされちゃうじゃんよ!

か~ちょ~ぉ~ぉ~!!(怒)

……ん?

でも、待てよ。

課長はバンカメに移籍したから、社内恋愛じゃなくて、フツーに飛ばされずにすむ??

ほんの一瞬の間に、今まで使っていなかった頭がフルスロットルで廻る。

いや、飛ばされる理由がなかよね。

ほっと、胸を撫で下ろしているとき、佐久間主任とハタと目が合う。

「ヨリ、戻してたんだ」

「あ……。えぇっとぉ……」

「どうりで東京から帰ってからキレイになったはずだ」

え~。ホントに?!

顔がぽっと赤くなる。

お世辞でも嬉しい。

「奥田さんが隠すつもりもないってことは、結婚の約束でもした?」

結婚?!

私と課長が?

ふみねぇと大垣さんみたいに、ウエディングベルをぶち鳴らすってこと?

課長と……結婚?

「う~ん。だけど、あの人は結婚はしない主義だと言ってたからな……」

舞い上がったところで、佐久間主任のハエ叩きがフルスイングで私を叩きのめす。