うちくぼんだ生気の無い目。

やせ衰えた腕には幾筋もの血管が浮き出ている。

顔色もとても悪そうに見える。


美魔女様は、車椅子の横に屈み込むと、

「この方は、杉原由紀さん。こうちゃんがお付き合いしている人よ」

と、その男性に紹介してくれる。

「あんたが……」

「初めまして。杉原由紀といいます」

こうちゃんとお付き合いしている人。

美魔女様はこの男性にそう伝えた。

どうやら、奥田課長を知っている人らしい。

「あいつは元気か?」

車椅子の男性はうつむきながら、ボソリと呟く。

え?

あいつ?

心の中で散々『鬼』呼ばわりしている自分のことは、とりあえず置・い・と・い・て。

課長のことを『あいつ』呼ばわりできるなんて、かなり近しい人なのか?

混乱している私に、男性は自嘲気味に笑いながら言葉を続ける。

「俺は父親として失格だった。あいつの選手生命を奪った俺のこと……あいつはきっと今も憎んでいるだろうな」