ふみねぇが……意識不明の重体?!

「な、なんば言いよっとね。かぁちゃん。冗談言うにも……」
「冗談てんなんてん、言うわけ……あっ!先生!富美代はっ!」

かぁちゃんが叫んだかと思うと、ぶちっと電話が切れる。

「かぁちゃん!?かぁちゃんどがんしたと?!」

その直後に田吾作からのメールが飛び込む。

『ふみねぇは手術が終わって、今、ICUに入った。今夜が峠。祈れ』

何が何だかわかんない。

ふらふらとトイレを出て、どうやって歩いたのか覚えていない。

いつの間にか私は厨房に戻っていた。

「おいこら!この忙しいときに……どうした?真っ青だぞ」

突然、視界に現れた佐久間主任に驚く。

そうだ。
ここは、パーティー会場で、私は、料理を作ってて、だから……

「あ。ジュレ、作んないと」
「もう作ったよ。横田達が今、出しに行った」
「そう……ですか。良かった」
「ちょっと、お前、おかしいよ。料理はいいから、そこに座れ」

佐久間主任が持ってきた椅子に肩から押さえ込まれるように無理に座らされる。

「何があった?」
「何……」
「まるで死人のような顔してるぞ」
「死……」

ふみねぇがICUに入った。
今夜が峠。
祈れ。

田吾作のメールが頭の中でグルグル回る。

死。
ふみねぇが死んじゃう?

何があったの?
なんでそんなことになってるの?

違う。
違うよ、人違い。

ふみねぇのことじゃないよ。

一生懸命、頭を振って否定しようとすればするほど、頭にメールの内容がまとわり付く。

「お前の力になるよ。だから、何があったか話してみろよ」

床にひざまずき、片膝を立てて、佐久間主任が心配そうに私の顔を覗き込む。

「ふみねぇが、私の姉が危篤だって今、連絡が家から来て……」
「えっ?!」
「ふみねぇ、助からないかもしれないって……」

発する声が嗚咽に変わって、喉を締め上げる。

私が泣いて気持ちが納まるのを待っていたかのように、そっと佐久間主任が口を開く。

「分かった。これから、すぐに車と飛行機を手配する。今すぐ、日本に帰れ。いいな?」
「佐久間主任……」

顔を上げた瞬間、佐久間主任に抱きすくめられる。

「大丈夫。お姉さんは大丈夫だよ」