そして、2週間後――――

抵抗虚しく、ついに来てしまった。

ニューヨーク。

天高くそびえるスカイスクレイパー。

スクランブルを行き交う人人人。

圧倒されつつも、出るのは溜息ばかり。

「はぁ、ホント、ついとらんばい」


この2週間。

人事部長に掛け合って、何とかこの人事を無しにして下さい!と直談判したけど、

「これは専務の直轄人事だからねぇ。私の力では……いやはや……ゴホゴホッ」

なんて、弱気な人事部長は直後に入院。


実家の両親に相談した日にゃ……

「なんばいいよっとね!由紀!!大出世たい!!」

村を挙げての壮行会まで開かれる始末。

引き継ぎされた山田先輩には「何で行くのが俺じゃねぇンだよ!!」と八つ当たりされまくり。


そして、最後の頼みの綱、生まれて初めて乗った飛行機は無情にも墜落することなく、無事到着してしまう(いや、落ちたらそれはそれでヤなんだけど……)。



「杉原君!こっちこっち!」


到着早々、名前を呼ばれてキョロキョロと辺りを見回す。


お?!

おおっ!!

第一ムラビト発見!

「佐久間主任!」

手を振る佐久間主任の姿、発見!

慌てて手を振り返す。

知らないところで知った人に合うと、なんだかほっとする。

「わざわざ、お迎えに来て頂いてすみません」

「いいさ。しかし、オンタイムの到着だったな。さすが日本の航空会社」

佐久間主任が「荷物はこれで全部?」と言いながら、私の荷物をカートに乗せ始めた。

「奥田さんは今日、重要な会議があって……」

佐久間主任の言葉に重要なことを思い出す。

そうだった。
まず、佐久間主任のこの誤解を解いとかなきゃだよ。

「あの……。私、もう奥田課長とは別れましたから」

「えっっ!?ええ???」

佐久間主任は持ち上げたスーツケースを自分の足の上にゴトリと落としてしまっていた。