理子に春斗が好きと打ち明けてから、理子と話すことも増えていた。

理子は高校生になった葉山先輩となかなか会う時間が合わなくて悩んでいるけど、とても優しくて幸せなんだって笑顔で話してくれる。

恋をしている女の子ってみんなキラキラして好きな人のことを話す。

それがすごく素敵だなって思うんだ。

私も、美香や理子に春斗のことを話している時は、キラキラしているんだろうな。


蒸し暑くなってだんだん夏の匂いがする6月の昼休み。

私はじんわり汗をかきながら相変わらずお気に入りのベランダにいた。

3年生になると2階の教室になったため、ベランダからの眺めは少し低くなったものの、お気に入りのベランダはやっぱり落ち着く。

パタパタと下敷きで暑さを凌いでいると、春斗が2年生の女子に呼び出されたと、2組の男子が騒いでいた。

結構可愛かったよな、小さくて色白で…なんて付け加えている。

それを聞いた私は今すぐに

誰に呼ばれたの?

何で春斗が呼ばれるの?

ってその男子に詰め寄りたかった。

だけど、いくら好きってバレバレな私にも、彼女じゃない女の子がそんなことしちゃいけなっていう意識が働いて…

動揺を隠すために話を聞いていないフリをしていたけど、その場にいたノリが私のところへ駆け寄ってきた。

「あいちゃん、今の聞いた?」

「えっ、今のって?」

そんな風に返事をするけど、明らかに動揺が隠せていないって自分でもわかるくらい、目は泳ぎまくって、下敷きを仰ぐ手は不自然に早くなっていた。

そんな私を見て、相変わらず細い目をさらに細くして微笑みながらノリが言った。

「大丈夫。もし告白だったとしても…てか告白なんだろうけど、春斗は断るから。」

どこからそんな自信が湧くんだろうっていうくらい、力強く、だけど優しく私に話すノリ。

本当にいいヤツだ。

「ありがと、ノリ。」