「こんな所を偵察させるとは。俺らの上官は余程の変態らしい」
 先頭に立つ男が自動拳銃を持ちながら不平を漏らす。
 全くだ、とその場にいる全員が頷く。
 目の前には今にも崩壊しそうな建物が並んでいた。
 彼らは敵、つまりは東の国の支配下である廃墟に来ていた。敵戦力の偵察。それが彼らの任務だった。
 角から角へと時には慎重に時には大胆に移動していく。
「誰も居ないな。当たり前か」
 後方に立つ男の一人が言う。支配下といえど、此処は廃墟。誰かが居るわけがない。居るとしても経由として利用しているだけのはずだ。
「全くだ。さっさと帰ろうぜ」
 男が自動拳銃を降ろす。
「いや、待て」
 先頭に立つ男が叫ぶ。