漆黒の夜空を、駆け上っていく白い影。


音もなく、頂点に上り詰めたそれは、ほんの一瞬、息を止めるみたいに静止した後、鮮やかなオレンジ色の、光の花を咲かせた。


地響きにも似た、ドンッという音が、数秒遅れて、コンクリートの壁を揺らす。


こんな光景、もう、何度も見てきた。


綺麗だなぁとは思うけど、今さら花火なんて、珍しくもなんともない。


浴衣を着たいと思ったのも、20歳までかな。


…どうせ高瀬さんとは行けないもんね…


胸の奥でそう呟いたのは、強がりなんかじゃない。