ケータイ小説 野いちご

[企]*white valentine*

6:white valentine



振り向くと諦めかけた偶然があった。


「……蓮さん!」


見上げてみる蓮さんは、星が見えない都会の深い夜を背負っているのに、とても輝いて見えた。


「こんな時間に一人でカワイ子ちゃんが座ってたら危ないよー?」


蓮さんは大きな手を私に差し伸べてくれる。

私は驚きで口を開けたままその手を取った。


「さぁさぁ、菜月ちゃんもバレンタイン気分味わおうじゃないの!こっちおいで?」

「わ、ちょっ……!」


真っ直ぐショーウィンドウの方へ突き進む蓮さんに引っ張られながら私は歩き出した。


「れ、蓮さん!どうしてここに!?」

「どうしてはこっちが聞きたいよ?俺は片付けしに来ただけなんだから」

「そ……それはそうですけど、遅くないですか?」

「んーと、それは聞かないで?」


口元に人差し指を当てて困ったような笑顔。

それから小声で「ホントは狙ったんだよねー」なんて明るく独り言。


……狙った?

何を?


私は働かない勘を巡らせながら蓮さんに連れて行かれるがまま、ショーウィンドウの中に入った。



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