『姉貴…顔が崩壊してんで』


朝の食卓。

味噌汁を片手に
太一くんが言う。


『…ほえ―…?』


小春ちゃんは
寝癖のついた前髪で

ぽわんと
太一くんを見た。


そしてそのまま
だし巻き玉子に視線を落とし


『むふふ…』


と、不気味に微笑んだ。


太一くんは
本気で引き気味だ。


俺ですら…若干引いている。



小春ちゃんは
今朝からずっと―…


正解には
昨晩からずっと

こんな感じだ。


ぼんやりしては

時折
思い出したように

にやにやする。


事情を知っている俺は

なんだか
居たたまれなかった。


昨晩とは違う意味で。




『いってきまーす―』


身支度が済み
制服姿の小春ちゃんが


くるくると
回りながら

玄関へ向かうのが見えた。


『あんた前見て歩きなさいよ。
車に気をつけてね。』


おばさんも
心配そうに玄関へ向かう。


『だいじょぶだいじょぶ―!』


小春ちゃんの
元気な声が聞こえる。


全然大丈夫には見えない…