「―――アスティッ!」


遠くに栗色の癖のある髪を見つけ、あたしは思いきり手を振りなから名前を呼んだ。


アスティはあたしに気付いたのか、ゆっくりと振り返る。


「…リオ?あれ、エルは…」


「それがっ…、クリ、クリスが…っ」


アスティの元まで駆け寄ると、あたしは乱れた呼吸でそう言った。


すると、アスティの眉がひそめられる。


「クリス?」


「アスティたちの…馬、でしょ?」


そう言いながら、アスティの腕を引っ張る。


「クリス、盗まれたみたいで、エルが今追ってるの!」


必死に状況を説明すると、アスティはやっと理解したのか、顔つきが変わった。


「…手綱の切口が刃物で切られたみたいだったから…なるほど、そっか」


「早く探して、助けてあげないと!」


「わかった、行こう」


あたしがアスティを誘導する形で、さっきエルと別れた場所まで走った。