「お前はここを出ても生きていけないだろう」

「上等! こんな家にいるよりマシよ!」

「ふん、生活能力の無い小娘が……まぁいい、1人で生きられずに泣きついてくるまで待ってやろう」

「あんたの世話になるくらいなら、独りで地面に這ってでも生きてみせるわ!」

 ――あたしの両親は、あたしが高校に入学した直後に交通事故で亡くなった。

 桜が美しく咲き、その花弁が舞い散っていた季節だったのを覚えている。

 交通事故……突然訪れた別れ、だ。

 少し買い物に出かけてくるから――と、いつものような会話を交わしたのが、あたしたちの最後。

 あまりに唐突過ぎて、最初は訳が分からなかったし、実感もなかった。

 いつものように、また笑顔であたしの前に帰ってきてくれる、って……そう思っていたけど。

 あたしの前に、死に化粧を施されて冷たく綺麗に横たわっている両親が、あたしに現実を突きつける。

 ついさっきまで、笑顔で会話していたのに。

 あぁ――いなくなっちゃったんだ……

 どうして……?

 空虚な気持ちに支配されたあたしは、気がついたときには母方の祖父に引き取られていた。

 まるで誘拐のように、強引に。