ネコ専務には、実は弟がいた。その名を
「ネコ住職」という。

白猫如来を本尊とする宗派・寧功宗
(ねいこうしゅう)の高僧で、弟子を
100人もっているのだった。

ネコ住職は、お経を間違えずに読み通せ
たことが一度もない。

読経の途中で必ず、「あれ、何だっけ?」
と分からなくなり、「ちょっと待ってね」
とお経を見直すのである。

しかしそれで、弟子や信徒がネコ住職に
ガッカリすることはない。というのは、
平凡な僧なら、お経を読み間違えたら
弟子の手前かっこわるいとか思うのに、
ネコ住職はまったく気にしない。

それでかえって人々はネコ住職を

「すべての執着を離れて悟った名僧で
 ある」
と尊敬するのであった。


ちなみに、ネコ住職は黒ぶちの入った
シロネコである。
             おしまい