純はまだ荒れ果てた自宅の前で蹲っていた。

完全に放心状態だ。

愛する夫に先立たれ、今我が子までも…。

襲い来る屍の群れを必死の思いで蹴散らし、ようやく戻ってきたというのに…。

雄大を失った今、彼女には生きる目的が見つからない。

純にとって、雄大は自分の人生そのものだったと言ってもいいのだ。

その人生そのものを失った。

今の純にあるのは、大きな喪失感と虚無感のみ。

立ち上がる事さえ儘ならない。

そんな彼女のポケットで、携帯が鳴った。

「……」

虚ろな瞳のまま、携帯を取り出して送信されてきたメールを見る。

『山田です。駅の地下鉄ホームから脱出できるかもしれません』

その内容を見ても、純には何の感慨も湧かない。

今更脱出口が見つかったからって何だって言うの?

もう私には、生きる理由なんてない…。